無香料製品選びで知っておきたい パッケージ素材が内容物に与える影響
無香料製品を選んだにも関わらず、製品からわずかな「変な臭い」を感じた経験はないでしょうか。それは、原料本来の臭い(原料臭)である場合もあれば、製造過程でのごく微量の香料の混入(キャリーオーバー)である可能性も考えられます。しかし、もう一つ見落とされがちな要因として、製品を詰めている「パッケージ素材」が内容物に与える影響が挙げられます。
パッケージ素材が内容物に与える主な影響
パッケージは、製品を保護し、品質を維持する重要な役割を担っています。しかし、パッケージ素材と内容物の間では、目に見えない相互作用が起こることがあります。無香料製品の品質、特に「香り」に関連して問題となりうる主な現象は以下の3つです。
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移行(Migration) パッケージ素材を構成する成分や、製造時に使用された添加剤(例:可塑剤、安定剤、インク成分など)が、時間経過とともに内容物へ移動する現象です。これらの成分自体が特有の臭いを持つ場合や、内容物中で変質して臭いを発生させる可能性があります。特にプラスチック素材では、素材の種類や内容物(油分など)、保管温度によって移行のリスクが変化します。
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吸着(Sorption) 内容物中に含まれる成分(例:製品の有効成分、あるいは原料本来の臭い成分)の一部を、パッケージ素材が吸い込んでしまう現象です。これにより、内容物の有効成分濃度が低下したり、本来の原料臭がパッケージに閉じ込められたりすることがあります。特定の香料成分や揮発性の成分は吸着されやすい傾向があります。
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透過(Permeation) 外部のガス(酸素、水蒸気など)や、空気中に漂う臭い成分がパッケージ素材を通り抜けて内容物に入り込む現象です。これにより、内容物が酸化したり、外部の不快な臭いが製品に移ったりする可能性があります。特にプラスチックフィルムは、素材の種類によって酸素や水蒸気、臭い分子に対するバリア性が大きく異なります。
これらの現象は、製品の品質劣化や、無香料であるはずの製品に意図しない臭いが発生する原因となり得ます。
主要なパッケージ素材と影響の特徴
パッケージ素材の種類によって、これらの現象の起こりやすさや影響の種類が異なります。
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プラスチック: 最も広く使用されている素材ですが、種類が非常に豊富であり、それぞれ透過性、移行性、吸着性が大きく異なります。例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は水蒸気バリア性は比較的高いものの、酸素や有機化合物の透過性は比較的高めです。ポリエチレンテレフタレート(PET)は酸素バリア性にも優れていますが、アルコールなどの一部の有機溶剤に対するバリア性は限定的です。 プラスチックは、製造過程で様々な添加剤が使用されるため、これらの添加剤の移行リスクも考慮が必要です。また、リサイクルプラスチックを使用する場合、過去の内容物の残留臭や不純物のリスクもゼロではありません。多層構造にすることで、それぞれの層の弱点を補い、総合的なバリア性を高める工夫がなされることもあります。
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ガラス: 化学的に非常に安定しており、内容物との反応や素材成分の移行リスクが極めて低い素材です。ガスや臭い分子も透過しにくいため、内容物の品質を長期間維持するのに優れています。ただし、蓋材がプラスチックや金属、パッキンである場合、その部分からの移行や透過のリスクは考慮する必要があります。また、破損しやすい点や重量がある点がデメリットとなります。
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紙・板紙: 吸湿性が高く、外部の湿気や臭いを吸着しやすい性質があります。食品や化粧品の一次容器として直接使用されることは少ないですが、外箱として使用される場合、保管場所の環境臭を吸着し、製品本体に移してしまう可能性が考えられます。内容物によっては、内面にポリエチレンなどのバリア性を持つ素材をラミネートする加工が施されます。
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金属(アルミ、スチール): アルミやスチールは非常に高いバリア性を持つ素材です。ガス、水蒸気、光などを完全に遮断できるため、内容物の酸化や劣化を防ぐのに優れています。ただし、内容物によっては金属と反応する可能性があるため、多くの場合、内面にエポキシ樹脂などのコーティングが施されます。このコーティング材からの微量な成分移行の可能性は考慮されますが、適切に管理された製品であればリスクは低いとされています。
無香料製品を選ぶ際にパッケージについて意識すること
成分表示だけでは、パッケージ素材の具体的な種類やその品質までを知ることは難しいのが現状です。しかし、製品選びや使用において、以下の点を意識することで、パッケージからの影響を最小限に抑えるヒントになります。
- 信頼できるメーカーを選ぶ: パッケージング技術や品質管理に力を入れているメーカーは、内容物の安定性を最大限に保つために適切な素材選定や設計を行っています。製品や企業のウェブサイトで、容器へのこだわりや品質管理について言及されていないか確認するのも一つの方法です。
- 多層構造パッケージの利点を理解する: 特にプラスチック容器で、複数の素材を組み合わせた多層構造のパッケージが採用されている製品は、単一素材よりもバリア性が高く、外部からの影響や内容物の吸着・移行を防ぐ効果が期待できます。
- 適切な保管を心がける: 直射日光や高温多湿の場所は、パッケージ素材の劣化を早めたり、移行や透過の現象を促進したりする可能性があります。製品に記載された保管方法に従うことが重要です。特に香りの強いものの近くでの保管は避けるのが賢明です。
- 開封後の期間に注意する: 一度開封すると、空気との接触が増え、品質劣化が進みやすくなります。また、開封することでパッケージのバリア性が損なわれる場合もあります。使用期限や、開封後の使用推奨期間を守りましょう。
まとめ
無香料製品の品質は、内容成分だけでなく、それを包むパッケージ素材にも大きく左右されます。パッケージ素材からの成分移行、内容成分の吸着、外部からの臭いの透過といった現象は、無香料であるはずの製品に意図しない臭いをもたらしたり、品質を低下させたりする要因となり得ます。
製品の成分表示を確認することに加え、パッケージ素材の特性や製造メーカーの品質管理体制に意識を向けることで、より安心して使用できる無香料製品を見つける一助となるでしょう。パッケージは、単なる容器ではなく、製品の品質を守るための重要な要素であることを理解し、賢い製品選びに役立ててください。