無香料と表示されていても注意が必要な理由 揮発性有機化合物(VOC)のリスクを知る
無香料製品を選んでいても感じる不調の原因とは
無香料の製品を選んでいるにもかかわらず、特定の製品を使用した際や、特定の環境にいる際に、頭痛や吐き気、肌の刺激といった体調の変化を感じることはありませんでしょうか。香料が含まれていないはずなのに、なぜこのようなことが起こるのか、疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
「無香料」という表示は、あくまで製品に意図的に香料成分が配合されていないことを意味します。しかし、製品には香料以外の様々な化学物質が含まれており、その中には香料と同様に揮発性があり、体調に影響を与える可能性のある成分が存在します。その代表的なものの一つに、「揮発性有機化合物(VOC)」があります。
揮発性有機化合物(VOC)とは
揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds: VOC)とは、常温で大気中に容易に揮発する性質を持つ有機化合物の総称です。シンナーや接着剤、塗料などに含まれることで知られていますが、私たちの身の回りにある様々な製品や建材にも広く使用されています。
VOCには非常に多くの種類があり、アセトン、トルエン、キシレン、エタノール、酢酸エチル、ホルムアルデヒドなどが代表的な例として挙げられます。これらの化合物は、製品においては溶剤、希釈剤、洗浄剤、防腐剤、機能性成分など、様々な目的で配合されています。
無香料製品とVOCのリスク
「無香料」と表示された製品でも、以下の理由からVOCが含まれている可能性があります。
- 機能性成分としての配合: エタノール(エチルアルコール)は、化粧品や日用品において、溶剤、清涼剤、収斂剤、防腐剤、または有効成分を安定させる目的で広く使用されています。エタノール自体は揮発性の高い有機化合物ですが、香料として分類されないため、無香料製品にも配合されることがあります。アルコールに敏感な方や、アレルギー体質の方の中には、エタノールによって肌の乾燥や刺激を感じたり、吸入によって気分が悪くなったりする場合があります。
- 溶剤や安定剤: 製品の製造過程で他の成分を溶かしたり、製品の品質を保ったりするために、揮発性の成分が使用されることがあります。これらも香料ではありませんが、製品から揮発し、空気を汚染する可能性があります。
- 不純物やキャリーオーバー: 原料自体に含まれる微量の不純物や、製造設備に残存した微量の物質(キャリーオーバー)として、意図せず製品にVOCが含まれる可能性もゼロではありません。
これらのVOCは、製品の開封時や使用時に空気中に揮発し、吸入されたり肌に触れたりすることで、人によっては様々な健康影響を引き起こす可能性があります。一般的な症状としては、目の刺激、鼻や喉の痛み、頭痛、めまい、吐き気などが挙げられます。特に敏感な方の場合、これらの症状が強く現れたり、化学物質過敏症のような状態を引き起こす引き金となることも知られています。
VOCのリスクを避けるための対策
無香料製品を選んでいてもVOCによる影響を減らすためには、以下の点に注意することが有効です。
- 成分表示の確認: 製品の全成分表示を確認することが第一歩です。特に、エタノール(エチルアルコール)、変性アルコールなどが上位に表示されている製品は、VOCの含有量が多い可能性があります。ただし、全てのVOCが成分名から容易に判別できるわけではない点に留意が必要です。INCI名(化粧品成分の国際命名法)に慣れておくことも役立ちます。
- 通気性の確保: 製品を使用する際は、窓を開けるなどして室内の換気を十分に行うことが重要です。空気中のVOC濃度を下げることで、吸入による影響を軽減できます。
- 少量からの試用: 新しい製品を試す際は、まずは少量から使用し、体調に変化がないかを確認します。肌につける製品であれば、二の腕の内側などでパッチテストを行うことも有効です。
- 特定の製品カテゴリへの注意: 洗剤や柔軟剤、消臭スプレーなどの一部には、機能性成分として揮発性の成分が配合されていることがあります。これらの製品を選ぶ際も、成分や使用上の注意をよく確認することをおすすめします。
- 生活環境全体を見直す: VOCは製品だけでなく、建材、家具、カーテンなどからも発生します。特定の製品だけが原因とは限らないため、必要に応じて専門機関に相談するなど、生活環境全体を見直すことも考慮に入れると良いでしょう。
まとめ
「無香料」という表示は、香料による影響を避けたい方にとって重要な情報ですが、それが製品の安全性を完全に保証するものではありません。無香料製品にも、揮発性有機化合物(VOC)をはじめとする香料以外の化学物質が含まれており、これらが体調不良の原因となる可能性があります。
製品選びにおいては、単に「無香料」表示だけでなく、全成分表示を確認し、ご自身の体質に合わない可能性のある成分が含まれていないか慎重に見極めることが大切です。また、製品の使用環境を整えること、少量からの試用で確認することなど、総合的な対策を講じることで、より安全で快適な無香料生活を目指すことができるでしょう。ご自身の体調の変化に注意を払い、必要であれば専門家へ相談することもご検討ください。