成分表示の専門用語を読み解く 無香料製品選びに役立つINCI名の基礎知識
無香料製品選びのハードル 成分表示の専門用語
無香料の製品を選びたいと考えている際、製品パッケージの成分表示は非常に重要な情報源となります。しかし、そこに記載されている成分名が専門的で難しく、内容を正確に理解することが困難に感じられる方も多いのではないでしょうか。特に、特定の成分に敏感な体質の方にとって、表示されている内容が自身の安全に関わるため、そのハードルはより高く感じられるかもしれません。
単に「無香料」と表示されているだけでは、香料以外の化学物質や、体質によっては反応を引き起こす可能性のある天然由来成分などが含まれているかどうかまでは判断できません。安心して製品を選ぶためには、成分表示をある程度読み解く知識が必要となります。
この記事では、成分表示に頻繁に登場する「INCI名」とは何か、そしてその基本的な読み方について解説します。成分表示の専門用語に対する理解を深めることで、より安全で快適な無香料生活を送るための一助となれば幸いです。
成分表示が果たす役割とその重要性
製品の成分表示は、消費者がその製品に何が含まれているのかを知るための基本的な情報です。化粧品や多くの日用品において、使用されている全成分を表示することが法律で義務付けられています。これにより、消費者は自身のアレルギー歴や敏感な成分を考慮し、製品を選択することができます。
特に無香料製品を選ぶ際には、成分表示の確認は必須です。なぜなら、「無香料」という表示はあくまで「香料成分を配合していない」という意味であり、製品によっては香料以外の着色料や保存料、界面活性剤といった他の成分が刺激となる可能性があるためです。また、微量の香料が含まれていても、特定の基準値以下であれば無香料と表示できる場合もあります。
成分表示を理解することは、製品の安全性や自身の体質との適合性を判断する上で、非常に重要なステップとなります。
INCI名とは 国際的に統一された成分名称
成分表示で目にする専門的な名称の多くは、「INCI名(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)」と呼ばれるものです。INCI名とは、化粧品成分を国際的に統一するために定められた名称体系です。世界中で同じ成分に対して同じ名称を使用することにより、国や地域が異なっても成分情報を正確に伝え、消費者が成分を比較検討しやすくすることを目的としています。
多くの国、地域でこのINCI名に基づいた成分表示が採用されています。日本においても、化粧品の全成分表示においては原則としてINCI名(日本で一般的に使用されている名称も併記可能)が用いられています。
INCI名の基本的な読み解き方
INCI名をすべて記憶する必要はありませんが、基本的なルールやいくつかの重要な成分名を知っておくことで、成分表示を読み解く手がかりが得られます。
1. 表示順序の原則
成分表示に記載されている成分は、原則として配合量の多い順に並んでいます。つまり、表示の一番最初に記載されている成分が最も多く含まれており、リストの後半に行くにつれて配合量は少なくなります。水が最も多く配合されている製品が多いため、「水」が最初に記載されているケースが多く見られます。ただし、配合量が1%以下の成分については、順不同で記載されることがあります。この原則を知っておくだけでも、製品のおおよその主成分を把握することができます。
2. 代表的な成分のINCI名
いくつかの基本的な成分のINCI名を知っておくと便利です。 * 水: Water * BG(ブチレングリコール): Butylene Glycol * グリセリン: Glycerin * エタノール(変性アルコール含む): Alcohol, Alcohol Denat. * ミネラルオイル: Mineral Oil * ワセリン: Petrolatum
これらの成分は多くの化粧品や日用品に含まれており、それぞれの役割(溶剤、保湿剤、ベース成分など)を理解することで、製品のテクスチャーや基本的な性質をイメージしやすくなります。
3. 香料に関するINCI名
香料成分は、複数の芳香成分の混合物であることが一般的です。全成分表示においては、個々の香料成分名をすべて記載する代わりに、以下の名称でまとめられることが多いです。 * Parfum (ヨーロッパで一般的) * Fragrance (アメリカで一般的)
日本の化粧品表示では、これらのうちいずれか、あるいは両方が使用されます。これらの名称が記載されていれば、その製品には香料が配合されていることを意味します。無香料を謳う製品には、原則としてこれらの名称は含まれていません。
ただし、体質によっては特定の香料成分に反応する場合があります。EUなどでは、アレルギーを引き起こす可能性のある特定の香料成分(例:リモネン、リナロール、ゲラニオールなど)については、少量でも個別にINCI名で表示する義務があります。日本の自主基準においても、これら特定の香料成分を表示することが推奨されています。
アレルギーや過敏症がある場合は、"Parfum"や"Fragrance"という表示がない製品でも、念のため個別の香料成分名(例: Limonene, Linalool, Geraniol, Geraniol, Citronellol, Eugenolなど)が記載されていないかを確認すると、より慎重な製品選びが可能になります。
4. 天然由来成分の表示
植物エキスや精油などの天然由来成分もINCI名で表示されます。例えば、カモミールエキスのINCI名は"Chamomilla Recutita (Matricaria) Flower Extract"のように、植物の学名や部位名が含まれることが一般的です。
天然由来成分だからといって全てが安全とは限りません。特定の植物成分に対してアレルギーや刺激反応を示す場合もあります。ご自身の経験上、避けるべき特定の植物成分がある場合は、そのINCI名を覚えておき、表示を確認することが重要です。
無香料製品選びにおけるINCI名の活用
INCI名を含む成分表示の知識は、無香料製品をより賢く選ぶために役立ちます。
- 隠れた香料を見抜く: 「無香料」表示があっても、成分表示に個別の香料成分名(Limoneneなど)や特定の精油名が含まれていないか確認します。
- 香料以外の刺激成分を避ける: ご自身の肌質や体質に合わない可能性のある他の成分(例: 特定の界面活性剤、防腐剤など)のINCI名を知っておき、含まれていないかチェックします。
- 製品の性質を推測する: 配合量の多い上位の成分を見ることで、製品の基剤や主要な保湿成分などが分かり、おおよその使用感をイメージできます。
すべてのINCI名を覚えることは現実的ではありません。まずはご自身にとって特に重要と思われる成分(過去に反応があった成分や、避けたいと考えている成分)のINCI名から確認していくと良いでしょう。また、インターネット上にはINCI名データベースや成分辞典も存在しますので、参考にすることも可能です。ただし、情報の正確性を確認することが重要です。
まとめ
製品の成分表示、特にINCI名を読み解くことは、無香料製品を安心して選ぶための重要なスキルです。最初は難しく感じるかもしれませんが、表示順序の原則や、ご自身にとって重要な成分の名称から少しずつ知識を身につけていくことで、製品選びの精度を高めることができます。
「無香料」という表示だけに頼るのではなく、成分表示の内容を理解し、ご自身の体質やこだわりに合った製品を見つけるための判断材料として活用してください。これにより、より快適で安全な無香料生活を実現できるでしょう。