「無香料」「低香料」「フレグランスフリー」表示、その違いと製品選びのポイント
無香料表示を取り巻く現状
近年、香料への感受性が高まり、無香料製品への関心が増しています。しかし、製品パッケージに記載されている「無香料」「低香料」「フレグランスフリー」といった表示が、必ずしも同じ意味を持つわけではないことをご存知でしょうか。これらの表示に対する理解を深めることは、香料による不調を避け、自身に適した製品を選ぶ上で非常に重要となります。本記事では、これらの表示が持つ意味と、製品選びにおいて注意すべき点について解説します。
「無香料」表示が意味すること
日本の化粧品や雑貨品における「無香料」という表示は、一般的に「製品の製造過程において、香りを付与する目的で香料成分を意図的に配合していない」ことを意味します。これは、最終製品から香りが全くしないことを保証するものではありません。
- 原料由来の香り: 製品を構成する成分そのものが持つ固有の香り(原料臭)は残ることがあります。例えば、植物エキスや特定の油分には特有の香りがある場合があります。
- キャリーオーバー成分: 原料の製造過程で微量に含まれてしまう成分が、最終製品に持ち越されることがあります。この中に香料が含まれている可能性もゼロではありませんが、通常は極めて微量であり、意図的に配合されたものではないため「無香料」と表示されることがあります。
- 香りをマスキングする成分: まれに、原料臭を抑えるために、香料以外の成分で香りをマスキングしている製品も存在します。この場合、香料は配合されていなくても、特定の化学物質が使用されている可能性があります。
したがって、「無香料」表示の製品を選ぶ際は、単に香りがしないかどうかだけでなく、成分表示を確認することが推奨されます。
「低香料」表示について
「低香料」という表示には、明確な定義や基準がありません。これは、香料を全く配合していない「無香料」とは異なり、香料が配合されているものの、その量が少ない、あるいは香りが控えめに調整されている製品に用いられることが多い表示です。
- 香料の配合: 香料成分が意図的に配合されています。
- 香りの感じ方の個人差: 「低い香り」の基準は主観的であり、個人の嗅覚や感受性によって感じ方が大きく異なります。低香料と感じる人もいれば、それでも香りを感じてしまう人もいます。
香料に敏感な方にとって、「低香料」表示の製品はリスクとなる可能性が高いため、避けるか、非常に慎重に成分を確認する必要があります。
「フレグランスフリー」表示について
「フレグランスフリー」という表示は、主に海外製品でよく見られます。これは「香料(Fragrance)を配合していない」という意味合いが強く、日本の「無香料」表示に近いですが、より厳密な基準で運用されている場合もあります。しかし、ここにも注意点が存在します。
- 「Fragrance」の定義: 一部の国や地域では、「Fragrance」という単一の成分名で、実際には複数の香料成分がまとめられている場合があります。したがって、「フレグランスフリー」は「Fragrance」という表示がないことを意味しますが、個別の香料成分(リモネン、リナロールなど)が配合されていないとは限りません。
- マスキング剤: 「無香料」と同様に、原料臭や他の成分の香りを隠すために、マスキング効果を持つ化学物質が配合されている場合があります。これらの成分は「Fragrance」としては表示されませんが、特定の化学物質に敏感な方にとっては問題となる可能性があります。
「フレグランスフリー」表示の製品を選ぶ際も、全成分表示を確認し、意図しない化学物質が含まれていないか確認することが重要です。
安全な製品選びのためのチェックポイント
これらの表示の違いを踏まえ、より安全な製品を選ぶためには、以下の点をチェックすることが有効です。
-
全成分表示を確認する:
- 「香料」「フレグランス」という表示がないか確認します。
- アレルギーリスクが報告されている個別の香料成分(例: リモネン、リナロール、ゲラニオール、シトロネロールなど)が記載されていないか確認します。これらの成分は、化粧品の成分表示において香料として一括表示される場合と、個別の成分名で表示される場合があります。
- 精油(例: ラベンダー油、ティーツリー油など)や植物エキス(例: ローズマリー葉エキスなど)が香料として、あるいは他の目的で配合されていないか確認します。これらの天然由来成分も香りを持ち、人によってはアレルギー反応を示す可能性があります。
- 原料臭をマスキングする可能性のある特定の化学物質(例: 特定のアルコール類やエステル類)が多量に配合されていないか、その成分が自身にとって安全かを確認します。
-
製品パッケージの表示を総合的に判断する:
- 「無香料」「低香料」「フレグランスフリー」といった表示だけでなく、「アレルギーテスト済み」「パッチテスト済み」(ただし、全ての人にアレルギーが起きないわけではありません)といった表示も参考にします。
- メーカーが公開している製品情報やウェブサイトで、成分に関する詳細な説明や、香料フリーであることの具体的な基準を確認します。
-
テスター等で試す(肌に使う製品の場合):
- 可能であれば、製品を少量、肌の目立たない部分で試用し、自身に合うか確認します。ただし、嗅覚過敏の場合は香りの確認も重要です。
まとめ
「無香料」「低香料」「フレグランスフリー」といった表示は、製品を選ぶ上での手がかりとなりますが、それぞれが持つ意味合いには違いがあり、注意が必要です。特に香料や特定の化学物質に敏感な方は、表示だけを頼りにせず、必ず全成分表示を確認する習慣をつけましょう。成分に関する知識を深め、自身の体質に合った製品を慎重に選ぶことが、快適な無香料生活を送るための鍵となります。